長浜にあって地の素材に拘りながらも周辺や遠来の美味な素材も取り入れた、「湖北流江戸前鮨」


スキーに行くなんて言ってもメインはこっちに決まってるワケで。
奥伊吹スキー場に行くので、麓の長浜で一泊。
夜の呑みはこちら京極寿司さんに狙いを定めました。

カウンター限定 おまかせ鮨割烹[琵琶]を所望いたしました。

折敷は朱塗りできれいに掃除されている。

ネタ箱を見て、仕事の良さを予感しました。
しかし玉子焼きらしいものが2種類あるようだが、どういうことだろう?(この疑問は後で解決します)
寿司下駄は陶器製。

◆ヱビスビール(生)中
小もあるので夏場ちょっと喉を潤したいだけって時にもいいですね。

【料理5~6品】
◆八寸
・北陸の赤ナマコほうじ茶で茶ぶりして酢でなく出汁で漬け込み
ナマコというと脳が同時に酢の味をイメージするところがありますがこれは出汁で漬け込んでいて実に美味しい。
板前さんは、酢を使う場合でもこの手法で茶ぶりをして出汁と酢と醤油を合わせたものを出される場合がけっこうありますね。この時点で期待度抜群!

・真蛸のやわらか煮 江戸前の古い仕事
ここでしっかりとした江戸前の仕事も見せつけられる。お主、手練れよのぅ(笑)

・自家製の鮟肝 塩をふってある
もうね、パテよパテ。極上のパテ。
最近では虎丸さんの鮟肝にも仰け反ったけど京極寿司さんのはまた違う方向で仰け反った。
掴むのにも少しでも力を入れ過ぎたらほろほろ崩れそうなぐらい(実際崩れる)、ギリギリの固さ、というか柔らかさ。
味付が塩だけでいいという新鮮さとそれをキープさせる仕事。

◆〆鯖 桜チップで瞬間スモーク 煮切り醤油
思わず手を叩いてしまう、〆鯖。
桜のスモークかぁ~、同じものはできないだろうけど出来合いの〆鯖で今度キャンプでやってみてもいいなぁ。
てか鯖にスモークはいろいろ可能性がありそうだ。
ってか本当に香りがよくて。それはスモークだけの話しではないんですよねぇ。鯖自体の香りもいいからこうなるんだよなぁ。

【お酒】
・純米吟醸 生乍自由(うまれながらじゆう)×2合
こちらのお酒に関してはいろいろとお話をお聞きしたのですがこちらをご覧いただくとわかりやすいかも。
・七本槍 蔵出生純米酒×10合
・六瓢箪 吟醸酒×2合

この辺りから日本酒に切り替えました。
もう先に言っておきますが美味しいバロメーターの酒量は合計二人で1升4合。

◆北陸の松葉蟹
蟹の味噌とほぐし身を和えたものに大葉と茗荷と生姜と三つ葉、いろいろ薬味を合わせて果実のジュレ(出汁と酢で割った三杯酢)と共に。
うーん、薄々感じていたんだけどこのお店というか若大将、酢と出汁のバランスがすごく私好み。
薬味なんかも苦手な人でも食べれる感じに混ぜ込まれていて、でも風味はしっかり感じられて。

◆鰻の白焼き
浜名湖 醤油と塩と山葵で。
琵琶湖の鰻があればよかったんですけど、まぁこの時期にはなかなか難しい。
けどこの白焼きの焼き具合はよかったなぁ。
ありがちな表現ですが、表はカリカリ、中はフワフワ。

◆蝦夷鮑の姿煮
水と塩と酒で煮蛤の要領で。肝は酒蒸ししたもの。
あらまぁお上品なお味。そして当たり前かもしれないけど柔らかくて、味も薄そうに思ったけど意外としっかりした味わい。

◆季節の茶碗蒸し
河豚の白子の茶碗蒸し。
上に焼白子、地の中にも白子が。底の方に滋賀龍王の古株牧場の「つやこフロマージュ」というチーズが沈んでいる。

つやこフロマージュ (酸凝固 100g) - 古株牧場 直営スイーツショップ湖華舞
ググッたら古株つや子さん、1年前ぐらいのセブンルールに出てらっしゃったんですね。

12月12日(火) | セブンルール | プログラム | 関西テレビ放送 カンテレ
白子とチーズ、ナイスマリアージュですねぇ。
これちょっと白ワイン呑みたくなりました。

【握り13貫と巻物】
◆鱈の昆布締め
初っ端から、後でリピするぐらい気に入ったのが出てきました。
昆布の締め方が実に好みだなぁ・・・っていうかこれは後でわかることなんですが、こちらの若旦那はすし善で修行していらっしゃったそうなのですがその時に寿し ひでたかさんのご主人、山田英貴さんと一緒だったらしいんですよね。
今でも交流があって教えを乞うてもいるとのこと、そりゃ好みなはずだわと膝を打つ。

北の大地で出逢った卓越した「仕事」
◆ノドグロ
北陸のものを4日寝かしたものを炙りたてで。
口に入れて思わず、「初めて食べたノドグロを思い出した」と言ってしまいました。
あの感激アゲイン。
最近ではノドグロノドグロと高級魚の扱いとは思えない感じになって、ただ脂だけのものが多くて正直食傷気味でした。
が、このノドグロは違った。寝かし具合、炙り具合で本当にサッパリした脂でペロッと溶ける。

◆鰯
卸してすぐに塩で5分、リンゴ酢で5分浅く締めたものを少し寝かして。
鰯の脂とリンゴ酢の相性がいいとのこと。確かに。
臭みなど皆無。味わいしかない。
むしろ脂の香りが鼻腔を抜けるときの清々しさは清冽であり甘美。

◆天然のビワマス
煮切り醤油に柚子ポン酢を合わせたサッパリ目の地に浸したヅケ。
琵琶鱒って美味しいけど、こんなに美味しかったかしら。
ヅケにしたことによって少しだけある淡白さを補って、少しだけある脂っこさをセーブした感じ。


◆本鮪のヅケ
寿し ひでたかさんからの公認パクリと正直に仰る(笑)、手法のヅケで。
鹿児島の本鮪100kgモノ。
手法は公開しないでおこうかと思ったんですが、ググッてみたら既に写真出ちゃってるし(苦笑)、どうせひでたかさんの手法なんて見ただけでは真似できないでしょう、ということで。
これホント若大将曰くの「冷蔵庫でやってもダメなんですけど常温でこうやると短い時間でも昆布の風味が移るんですよねぇ」と。もう不思議。
口に入れてもしっかり昆布の風味が広がって、そしてしっかりとした赤身のヅケならではの旨味が追っかけてくる。

◆中トロ
同じ鮪で鹿児島で獲れた100kgモノ。
背中の皮ギシの部位。常温になるまで寝かして、アンデスの岩塩で。
ヅケと変わって岩塩でってのが嬉しい。
包丁の入れ方が絶妙。

◆小肌
三河もの。これぞ江戸前という感じの小肌。
小気味がいい。
なるほど江戸前のシャリとは違えているという意味がすごくわかりました。
シャリの量は変わらないのに、江戸前の赤酢のシャリよりもボリュームを感じやすい。
感覚的にお腹一杯になりやすいかもしれません。
現に、ウチの相方は「シャリがこないだより多い」と新潟のはつね寿司さんと比較していましたが、いや大きさは同じぐらいなんですよね。

◆細魚
浅い塩〆をして余分な水分を抜いて。あまり寝かさずに。

◆寒鰤
能登。寝かし5日目で初卸し。
ほう…この店に来ると北陸に行かなくてもいいんじゃないか(笑)、そんな思いにさせられます。
何と言ってもここの若大将、真杉国史さんはすし善修業時代に寿し ひでたかさんのご主人、山田英貴さんのみならず、福井の鮨 十兵衛の二代目、塚田哲也さんとも知己を得て初代の頃の十兵衛寿司さんでも一年間住み込み修行をして北陸の魚を勉強したとのこと。
海に面していない長浜にあってこれだけのものを出せるのはその探求心にあるのですねぇ。

◆〆鯖
生鯖からの浅〆。本当に浅くしか〆ていないので生に極めて近い。
4枚付でフレッシュさが際立つ。
ある意味ここのお店のスペシャリテ。見た目がキャッチーなのはありますが、それだけでない、この握り方でないといけない理由があります。
先に瞬間スモークを味わったからよくわかるところはあるのですが、こうでないと鯖の香りが感じづらいのであろうと思います。より、鯖の香りを味わってほしいという気持ちがこの盛り方になったのかと。
これは、鯖街道ゆえの矜持であるかもしれません。

◆甘海老
福井。一晩だけ常温で寝かせて。
一晩寝かせたことによって粘りや旨味が噴出し、モサ海老かと勘違いしたぐらい。

◆煮穴子
三重県の若松という鈴鹿沖というかな場所で獲れた穴子。
若大将はそんなに産地指定までしないのだが穴子だけはここのでないとダメだとか。
ツメは鰻と同じだとかでいろいろいいとこどりで調和して唯一無二の煮穴子に仕上がっている。


◆雲丹
北海道 赤酢でなくて雲丹ご飯状のシャリ。
雲丹は軍艦巻きが苦手で、海苔と雲丹が相見えると磯臭さが勝って最悪だと思っていたのですがこれは大丈夫、っていうかむしろ海苔がないとダメ。
シャリを雲丹ご飯にしているのもありますが、分量などが絶妙なんでしょうねぇ、ぜひ一口でいってください。絶頂の雲丹おにぎりです。

◆鉄火巻
赤身と中トロと中落ちを一緒に巻き込んだ。間に浅葱とアオサ海苔を混ぜ込んである。
まいうー、とか普通のこと言っちゃいそうな腕白さ(笑)
しもうた、これリピすべきやったわ。

◆玉子焼き
・甘めの出汁巻き関西風 十兵衛寿司の先代から教わったまさに関西の出汁巻き。
・海老と白身を擂り合わせて大和芋をつなぎにして焼いた江戸前の玉子焼き すし善で教わったが、教わったのは十兵衛の二代目当主の塚田哲也さんという(笑)
東西の玉子焼き食べ比べかつ十兵衛親子食べ比べ(笑)
先述していたのはこういうことだったのですが、これは面白い趣向ですねぇ。
しかも趣向だけではなくどちらも違ってどちらも美味しい。

【お椀】
◆ゲンゲのお椀。
ぶつ切りにして湯引きして浅めの鰹出汁。
出汁の引き方がExcelent!!!
薄いのですがしっかり味わいはあって、食べまくって呑みまくっての胃を静かに収めてくれます。
旨味しかない。


ここで食事は一旦〆。
あとはお代わりの酒肴です。

◆細魚の剥いだ皮を塩で炙ったもの
途中で出して戴いたのですが、酒肴であろうということでここで言及します。
細魚の皮まで活かすとは初めてです。
これが皮煎餅としては今まで味わったことのない優しさと、シンプルな塩のみの味付けが実に日本酒に合う。
これお土産で買えたらサイコウですが、それは無理な相談(笑)

◆帆立バター焼き
帆立LOVERな相方のために頼んでみましたがこれも実にいいですねぇ。
見た目、よくある帆立バターですがそこはやはり上質な鮨屋の酒肴。
細やかな味付けで私の大好きな「上質な居酒屋(褒め言葉)」です。

◆〆鯖スモーク
これはやはりリピしたく。
いやぁ…ホント酒がすすみます。

あと、鱈の握りもリピしたを!

【自家製デザート】
◆梅酢を使ったのアイスシャーベット
梅酢というが、ほんのりいい酸味は感じますがしっかりアイス。美味しい。

◆抹茶のブランマンジェ
一気にペロリといきかけて相方に怒られました(苦笑)
こういう舌触りのデザート大好き。
あんまり抹茶抹茶していなくて甘みもしっかりあっていいですね。

カウンター横には長嶋茂雄氏の書が。
洗心、まさに若大将の真杉国史氏の心構え。




黒壁ストリートの一筋横、喧噪から少しだけ外れたところにある名店。
道中の趣も最高なのです。

〆て二人で\47,000-。プライスレス。

※料理やビールの価格を差し引きして逆算したところ、1合あたりの価格が
 グラス価格のちょうど1.8倍程度でしたので日本酒の「グラス」はおそらく100ml。  
 お酒の値付けは市価の2.5倍程度です。鮨屋さんにしては良心的。。

シャリは先々代からの受け継がれたもので関西寄りの甘目で常温ぐらい。
若大将の「京極寿司の屋号である以上はあまりシャリを変えたくない」「こっちのものに合う仕事をしたい」とのセリフにシビれました。
長浜という、魚介を仕入れるには若干不利な立地にあり、それでも江戸前の確かな腕をもって、更に地元の食材も活かし、勝手に言わせてもらうならば「長浜前」といいましょうか。いややはりあえて「湖北流江戸前」と言わせて戴きたい。
大阪や京都の名店もいいですが、ここ長浜にあって気取りのない江戸前寿司を戴けるこちら、隠れた(隠れてないかw)銘店であろうかと存じます。
再訪確実です。

Feb. 6, 2019 Wed.


京極寿司寿司 / 長浜駅
夜総合点★★★★ 4.4


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